夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)の第1回大会は1915年(大正4年)に開催され、当時は「全国中等学校優勝野球大会」という名称でした。この第1回大会の予選から、一度も欠かさず出場し続けている「予選皆勤校」は、2025年現在で計15校存在します。
これらの学校は、長い歴史の中で統廃合や部員不足など、様々な困難を乗り越え、伝統を守り続けてきた稀有な存在ですが、大会に継続して出場することは決して簡単なことではありません。高校野球を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、皆勤が途切れてしまうことも現実味を帯びるようになってきました。
今回はそのうえで今後皆勤記録を伸ばしていく高校を検証してみました。
検証にあたっては今流行りのAIを利用。人間をも凌駕するその頭脳が下した結論をぜひご覧ください。
15校の顔ぶれ
結果を見る前に、該当の15校を確認します。
時習館 (愛知)
旭丘 (愛知)
岐阜 (岐阜)
同志社 (京都)
山城 (京都)
西京 (京都)
市岡 (大阪)
関西学院 (兵庫)
兵庫 (兵庫)
神戸 (兵庫)
桐蔭 (和歌山)
米子東 (鳥取)
鳥取西 (鳥取)
松江北 (島根)
大社 (島根)
当時は全国各地から大会に参加する風習が無かったこともあり、第1回大会の予選に参加したのは東海、近畿、山陰の3地区の学校でした。特に京都と兵庫からはそれぞれ3校参加しており、近畿地区は全出場校の半数にあたる7校が出場。当初から野球熱の高い地域であったことがよくわかります。
この中で近年甲子園に安定して出場している学校は米子東高校ですね。最下段の大社高校は昨年32年ぶりに夏の甲子園出場すると、初戦から報徳学園(兵庫)、創成館(長崎)、早稲田実(東京)と甲子園常連校を次々に撃破してベスト8入り。日本中に感動を与えたことは記憶に新しいです。
今後の皆勤継続について
第1回から昨年の第106回大会まで予選に参加し続ける15校。
しかし、皆勤記録の継続は決して簡単なことではありません。
人口減少による少子高齢化や野球以外のスポーツの人気向上などにより大会参加が危ぶまれる場面も目立つようになってきました。
市岡 部員不足で大阪大会1回戦棄権も 第1回からの「出場皆勤」は継続― スポニチ Sponichi Annex 野球 https://t.co/LrPaf8koNq
— スポニチ大阪⚾️野球 (@Sponichi1000) July 17, 2023
新チームは部員がギリギリの9人。
— nekotora (@baseball_pen) July 16, 2023
第1回からの皆勤校が瀬戸際に…
市岡 体調不良者による選手不足で池田との1回戦棄権 試合当日に無念の辞退― スポニチ Sponichi Annex 野球 https://t.co/Vn7hHO8qLb
浜山公園野球場
— たくなぐ (@taknag7621) September 15, 2024
第2試合 松江北🆚石見智翠館
間もなく試合開始です!
レジェンド校 松江北は昨年秋は部員不足で連合チームでの参加、
今年4月に1年生が入部して夏は単独チームで参加。
今回の秋季大会も1.2年生が残り単独での参加です!
部員12名ですが頑張れ!💪 pic.twitter.com/QWvdvvUHk4
一高校野球ファンとして、このまま15校全てが記録を伸ばし続けることを願いますが、現状をふまえると10年、もしくは5年以内に記録が途絶える学校が出てきてしまう未来もあるのかな…とつい考えてしまいます。
皆勤継続に必要な条件
今後脱落してしまう学校が発生するにしても、1校でも多くの学校が皆勤を続けてほしいですよね。そのうえで重要になることは「地域性」と「野球環境」、「学校の魅力度」の3つに集約されます。
一つ目の地域性とは学校が所在する都道府県や市町村の人口、隣県の顔ぶれのことを指します。一番わかりやすい指標は人口ですが、仮に地方でも近隣に大都市があれば地域性は良いと言えるでしょう。
野球環境は部員数やグランドの広さ、OB会の活動具合ですね。元々部員が少ない野球部になかなか人は集まりにくく、グランドが狭い場合は練習の質を高められません。OB会や保護者会の動きが活発であることは必ずしも良いとは言えませんが、高校生が部活動、特に野球部で活動を続けることを考えれば大人のサポートは必要不可欠です。
最後の学校の魅力度は最も重要かもしれません。先述した二つの条件を満たしていても、学校自体に魅力がないと中学生は進学を選択しないですよね。大学進学を考えたときのブランド力の強さやカリスマ的な監督の存在など魅力は多岐にわたりますが、最終的にはいかに独自色を打ち出せるかが鍵になってくるでしょう。
いざAIで予想!皆勤の最長に選ばれた学校は?
前段が長くなりましたが、本題に入ります。
上記で述べた皆勤継続に必要な条件3点を細分化して9項目を設置。各項目10点満点のうえでAIにスコアを算出してもらいました。
理論上、合計スコアの高い学校ほど皆勤継続の年数が長くなることになりますが、果たしてどのような結果になったでしょうか。
なお、詳しい採点項目と採点基準については以下「採点項目と採点基準」をご確認ください。
① 各学校が所在地する市町村の今後の人口安定性
10点: 人口増加が継続、または大幅な人口減少が見込まれない大都市圏の中心部に位置し、若年層の流入が非常に期待できる。
7-9点: 人口は比較的安定、または微減傾向だが、経済基盤がしっかりしており、急激な人口減少のリスクが低い。中心都市やその近郊。
4-6点: 人口減少傾向が顕著だが、地域の中核都市としての機能は維持されている。
1-3点: 人口減少が著しく、若年層の流出が続き、地域の活性化策も不透明。
② 各学校の野球部部員数
10点: 60名以上。各学年で十分な競争があり、非常に質の高い練習環境と層の厚さが期待できる。
7-9点: 40~59名。練習試合や紅白戦が十分に組め、チーム内競争も活発。
4-6点: 25~39名。練習や試合で人数は確保できるが、故障者が出ると厳しい場面も。
1-3点: 24名以下。練習や試合で人数が足りない可能性があり、チーム編成に苦慮する。
③ 各学校の過去10年間の部員数の増減傾向(2015年〜2024年の傾向)
10点: 継続的な増加傾向にある、または安定して非常に高い水準を維持している。学校の人気や野球部の魅力が大きく向上している。
7-9点: 安定している、または微増傾向。部員数の確保に大きな問題はない。
4-6点: 横ばい、または微減傾向。一時的に増減はあるが、大きくは変動しない。
1-3点: 減少傾向が顕著で、今後の部員数確保が懸念される。
④ 各学校の主要大会での実績(過去10年間の甲子園出場有無・県大会上位進出回数)
10点: 複数回の甲子園出場(特にベスト8以上)、または県大会で常に優勝争いに絡み、複数回優勝の実績がある。全国レベルの強豪校。
7-9点: 1回以上の甲子園出場、または県大会でベスト4以上の進出が複数回ある。県内の上位常連校。
4-6点: 県大会でベスト8~ベスト16の進出が複数回ある。甲子園出場は遠い。
1-3点: 県大会ベスト16以下が多く、甲子園出場からは非常に遠い。
⑤ 各学校のOB(プロ野球選手輩出有無)や現監督の影響力、求心力
10点: 野球殿堂入り選手やプロ野球監督経験者を複数輩出し、OB組織が極めて強固で野球界全体に影響力を持つ。現監督は全国的に知られた名将で、メディア(全国紙、スポーツ専門誌、テレビ)への露出が非常に多く、常にその采配や発言が注目されるなど、高校野球界全体に大きな影響力を持つ。
7-9点: 直近30年で複数のプロ野球選手を継続的に輩出し、OB組織が強固で活動が活発。現監督も指導実績が豊富で、野球専門誌や地域メディアで頻繁に取り上げられ、その指導哲学や個性的な采配が話題になるなど、高い求心力と知名度を持つ。
4-6点: 著名なプロ野球OBは少ないが、OB会は存在し、協力体制がある。現監督も一定の指導力はあるが、メディアでの露出は少なく、話題性に欠ける。
1-3点: プロ野球選手輩出は稀、またはOB組織の活動が不活発。現監督も就任間もない、または目立った実績が乏しく、話題性に欠ける。
⑥ 各学校の練習環境充実度(専用グラウンド・屋内練習場・寮の有無など)
10点: 専用グラウンド(広さ十分、内野人工芝・外野天然芝など最高レベルの整備状態、ナイター照明完備、複数ブルペン・打撃ゲージ)、広大な専用屋内練習場(複数打席、ピッチングマシン、トレーニング器具、多目的スペース、冷暖房完備)、充実した専用寮(管理栄養士による食事提供、個別学習スペース、トレーニングルーム完備)が全て揃い、年間を通して非常に質の高い練習が可能。
7-9点: 専用グラウンド(整備良好、照明あり)、屋内練習場(複数打席、ブルペンあり)、トレーニング設備が充実している。寮はないか、規模は小さいが、全体として高いレベルの練習環境を提供。
4-6点: 専用グラウンドはあるが、他部活動との併用が多い、または整備状況が標準レベル。屋内練習場や寮はなし。練習場所や設備に一部制約がある。
1-3点: 専用グラウンドがなく公共施設を利用することが多い、またはグラウンドが狭い・整備が不十分。屋内練習場や寮もなく、練習環境に課題が多い。
⑦ 各学校の都道府県内における人気状況(ブランド力・競争倍率)
10点: 県内トップクラスの進学校またはスポーツ強豪校として絶大なブランド力を持ち、競争倍率も非常に高い(2.0倍以上)。圧倒的な進学実績、中学生に強く支持されている校風(例:自由闊達、文武両道の手厚いサポート)、生徒の学校生活満足度を示す高い評価、部活動全体の突出した活発さが特徴。
7-9点: 県内でも認知度が高く、人気のある学校。安定した志願者数を確保しており、競争倍率も高い(1.5倍以上)。進学実績も安定しており、部活動も活発で、一定の校風が支持されている。
4-6点: 地域では一定の知名度があるが、競争倍率は平均レベル(1.0~1.4倍)。進学実績や部活動は標準的で、特別な校風の魅力は少ない。
1-3点: 志願者数が減少傾向にある、または定員割れを起こす年度がある。学校としての魅力発信が不足しており、中学生の支持が低い。
⑧ 各学校の教育方針と野球部の親和性(文武両道の推奨度など)
10点: 「文武両道」を学校の柱として強力に推進しており、野球部の活動と学業の両立を学校全体で徹底的にサポートする体制がある。特進クラスや難関大学進学を目指す生徒でも部活動を継続できるよう、補習体制や学習指導が非常に柔軟で、学校長も部活動に深い理解と支援を示している。進学実績と競技実績を高いレベルで両立している。
7-9点: 文武両道に理解があり、部活動も推奨している。学習面でのサポート体制も一定程度あり、両立がしやすい環境。学校長や教員も部活動に協力的。
4-6点: 文武両道と謳ってはいるものの、学業優先の傾向がやや強く、部活動へのサポートが手薄な場合もある。部活動の時間が制限されることもある。
1-3点: 学業優先の傾向が非常に強く、部活動への理解やサポートが不足している。部活動の時間が厳しく制限されたり、学習との両立が困難なケースが多い。
⑨ 各学校の野球部における地域住民・保護者の支援度
10点: 地域住民やOB、保護者会が非常に強力な協力体制を築いており、活動資金や運営面で手厚い支援がある。応援活動も非常に活発で、年間を通して資金援助、練習サポート、遠征手配など、あらゆる形で野球部を支えている。
7-9点: 地域住民や保護者からの理解と協力があり、一般的な活動支援に加えて、熱心な応援やボランティア活動も活発。後援会も組織的に活動している。
4-6点: 地域住民や保護者からの理解はあるものの、支援活動は一般的なレベル。後援会の活動も限定的。
1-3点: 支援体制が弱く、野球部が資金面や運営面で苦労している。保護者の負担が大きい場合がある。

最初の回答を見たとき、⑤「OB・監督」があまりにもおかしい点数だったため、こちら側から出身OBをAIに伝え、回答を再作成してもらっています。
その他の項目に関してもどこまで情報を正確に汲み取っているかは不明です。あくまでもAIの評価であることをご承知おきください。
ただ、この結果はあながち間違っていないようにも感じます。
ワンツーフィニッシュを飾ったのは関西学院と同志社。学校のブランド力で他校より秀でていいることは言うまでもありません。いずれも実力は一定水準ありますが、野球そのものというよりは、大学にエスカレーター式で上がれたり、就職に有利であったりするため、保護者の後押しや理解を受けられる点が高得点に結びついたようにも感じます。
やや意外と言っては失礼ですが、3位に入ったのが米子東。
人口が少ない山陰地方ということもあり上位は厳しいと予想していましたが、近年コンスタントに甲子園へ出場していることが大きそうです。甲子園でプレーする先輩の姿を見て憧れた中学生が進学するというサイクルになるため部員数の変動も例年小さいはず。やはり甲子園出場という実績は皆勤継続に向けて大きな武器となります。
近年部員不足に悩まされている市岡は6位にランクイン。
学校が大都市・大阪に所在することが有利なことはもちろん、元高野連会長である佐伯達夫氏をはじめ昭和に多数のプロ野球選手を輩出している点やレトロ感溢れる3本線の帽子が話題になるなど野球部の伝統が評価された印象です。
残念ながら東海地区の3校はいずれも下位に沈む結果となりましたが、そのうちの一校時習館は毎年東大、京大に多数の生徒を送り出す名門進学校として有名です。野球部も2024年秋~2025年春の県大会では甲子園出場経験のある成章や愛産大三河を倒しており、決して非力ではありません。学校の方針もあるとは思いますが、何か一つきっかけが生まれればさらに強くなる可能性を秘めています。
それ以外の学校も含め各校それぞれ特色を持ち、そのうえで106回連続皆勤という偉業を成し遂げています。昨年秋以降の大会への参加状況をふまえると今年の第107回大会予選も全15校が参加し、記録を伸ばすことでしょう。今後一年でも長く記録が伸びることを願いつつ、各校の状況をこれからも追っていきたいと思います。
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